ディストピア倫理学:
Dystopia Ethics:
Toward Future Technologies
With Uncertain Self-boundaries
【領域概要】 本研究領域は、未来テクノロジーの倫理学的および実存的な意味に向き合う学術プロジェクトである。 テクノロジーは自己存在を根源的な仕方で規定するインパクトを持つが、自律性や自由意志といった理念を核とする近代的な自己観は、そうした自己の不定性とテクノロジーのインパクトを不可視化してきた。 しかし身体や精神に介入して改変するようなテクノロジーによって自己の境界が不明瞭化するとき、そこでの自己の同一性は近代的な自己観で理解することがもはや困難となる。 そこで本研究領域は、未来社会におけるそうしたテクノロジーの浸透が自己存在に対してどのような帰結を持ちうるのか、そのポテンシャルを一種のディストピア的状況として予見的に分析する。 とりわけ、実際に構想中あるいは開発途上にある未来テクノロジーを標的として、倫理学諸分野をはじめとする哲学研究において培われてきた知見と手法によって分析を進める。 そのうえで、当該分析を踏まえたポスト近代的な自己観の構想を推進するとともに、テクノロジーの発展を積極的に受容しながら実存的な自由を享受する自己存在のありようを描き出すことを目指す。